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山の思い出
山の思い出
―朝日賢一 山の写真展―


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北八ツ彷徨('01冬山編)「メルヘンの森 第三章」

2000年12月30日
天候:晴れ後曇り
行程:北横岳ヒュッテ→北横岳→坪庭→縞枯山→茶臼山→白駒池→高見石小屋


 未明、小屋を出発し頂上へ。 北横岳北峰の頂上に立つ。 徐々に周りが明るくなってくる。 薄明の中で蓼科山の巨人が目を覚ます。 辺りには誰もおらず、薄紫色の光の中で私だけがこの巨人と対峙している。 山が私に語りかける。
  「一年振りだな。」「そうだな。」
  「お前にとって今年一年はどうだった。」「まあまあかな。」
  「一年後また来るか。」「多分来ると思う。」
 こんな会話を山としていたように記憶している。

「薄明の蓼科山」

 山の朝はとても寒い。 昨日にも増して風が強いためなおさらである。 手袋をしていても指先が痛い。 頬の感覚がなくなる。 寒さのためレンズのズームリングのオイルが固くなってしまって動きが悪くなったり、 三脚の脚が凍り付いてしまって元に戻らなくなったりしてしまう。 温度計を見ると-15度であった。 風が強いので体感温度は-20度ぐらいであろうか。

 太陽が顔を出す。 私の居る山頂に光が届く。 太陽の光がこんなに暖かかったとは。

「夜明の八ヶ岳連峰」

「未踏峰」

「山の朝」

 朝の撮影を終え小屋に戻り朝食を摂る。 今日の行程は長いため早目に出発したいところだが、 小屋の居心地があまりによいためコーヒーなど御馳走になったりしてついつい長居をしてしまう。

 出発は遅れたが微妙な具合に光が回って、メルヘンの森らしい風景を見ることができた。

「森の衛兵達」

「輝く樹林」

「光降る森」

「森の旅」

 縞枯山荘の辺りにはウサギの足跡があちこちを走り回っている。 姿は見えなかったけれど、ポテポテと飛び跳ねている姿を想像するだけでも可愛いものである。

 縞枯山の登りは北向きの斜面ということもあり、全てのものが凍り付いている。 巨大な冷凍庫の中に居るような感じである。 恐ろしいというよりもその美しさにただただ見とれるばかり。

「樹影」

「凍る森」

 縞枯山の頂上に出るとがらりと明るい雰囲気に変わった。 ここからは茶臼山への登りを除いて白駒池まで徐々に標高を下げていく。 それにつれ地面の雪の量は変わらないのだけど、森の木々に積もった雪はなくなっていき、 真っ白な森から濃緑に白が所々残った森へと変わっていく。 たった100mほど標高が低くなるだけでこうも違うものかと驚いた。

 今日もここまでは天気がよく汗をかくほどで、行動中は手袋なしでも十分だったのだが、 中木場で休憩した時に誤ってお湯のしずくをザックにこぼしてしまったら、数分後にはそれは氷のチップになっていた。 改めて自分は雪山に居るのだなと実感する。

 この頃から天気が徐々に崩れ出す。 完全氷結した白駒池湖畔にたどり着いた頃には、 お昼までの好天から一変して分厚い雲が空を覆い、上空では強風が唸りをあげていた。 この辺りは夏の頃は賑やかなのに、今は誰もおらずひっそりとしていて少々心細くなってしまう。

 高見石への登りに差し掛かかると、疲れが一気に出てしまったのか足が動かなくなってしまった。 一歩踏み出しては荒く息をして、また一歩踏み出しては荒く息をする。 そんなことの繰り返し。 頑張れども高度計の数字は同じ数字ばかり示していっこうに高度を稼げない。 疲労凍死という言葉も頭の隅に浮かんだりする。 とりあえずあの木まで、あの曲がり角までと喘ぎ喘ぎ登って行く。 結局、コースタイム40分のところを倍以上の1時間半かかって高見石小屋にたどり着いた。 しかし、今思い返してみるとつらかったことよりも、あの辺りの雪の森の美しさの方が心に残っている。 不思議なものだ。

 小屋の泊まりは20人ほどで、2階の大部屋の好きなところに寝ていいですよと言われる。 それと、シチューの晩御飯も美味しかったです。

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