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山の思い出
山の思い出
―朝日賢一 山の写真展―


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北八ツ彷徨('01冬山編)「メルヘンの森 第三章」

2000年12月29日
天候:晴れ
行程:ロープウェイ山頂駅→北横岳→北横岳ヒュッテ


 未明に家を出発。 普通、のぞみ、しなの、普通、バス、ロープウェイと乗り継いで、標高2230mのロープウェイ山頂駅へと向かう。 しなのの車中からは車掌さんの案内により真っ白に雪化粧した乗鞍岳や御嶽山を見ることができた。 バスからは八ヶ岳全山が見渡せ、 南八ツの主な峰々や天狗岳、これから向かう北横岳の辺りも真っ白になって青空の中に浮かんでいる。 これは期待できそうだ。

 ロープウェイ山麓駅からは高低差456m、約10分間の空中散歩であっけなく山頂駅へ到着。 ロープウェイには20人ほど乗ったが、私以外は皆スキー客で山頂駅へ着くなりスキーを履いて滑り降りてしまい、 私一人だけが残されてしまった。 家からここまで6時間半、長旅の疲れもあって今自分がどういうところに居るのか実感が湧かない。 今まで私が居た世界とあまりにかけ離れた景色なので、テレビの画面を見ているかのように現実味がない。

 とりあえず駅前の広っぱに出て、オーバーズボンをはきアイゼンを装着して、 でも今日は天気がいいからいらないかなと脱いだり着けたりをぐずぐず繰り返してしていると、だんだん頭が冴えてくる。 ああ、今自分は素晴らしい風景の中に居るんだ。 そのことにようやく気付いて慌ててカメラを取り出した。

「陽光」

「雪の山」

 この辺りのもう少し南には日本一高い所を通る国道299号(冬期は閉鎖)が北八ツの森を横断しており、 これは別名メルヘン街道と呼ばれている。 これにちなんで私はこの辺りを「メルヘンの森」と呼んでいるが、 その名のとおり、まるで絵本の中に入り込んでしまったかのような風景が続く。

 今日は天気もよいし、このような景色の中を登って行くのはとても楽しい。

「霧氷輝く」

「雪の森」

 約1時間ほどの登りで北横岳ヒュッテに到着。 小屋の若旦那、けんさんとの再会である。 いつもの常連さん達もいらっしゃいました。 1年振りなのにそんな感じが全然しないのは、この小屋の持つ暖かい雰囲気のせいかな。

 小屋での休憩もそこそこに、本日のハイライト、夕日を見るために北横岳頂上へと向かう。 頂上の少し手前より森林が切れるが、その途端西方より刃物のような冷たい強風が私を襲う。 肌が露出している部分からはたちまち体温が逃げ出して、痛いという以外の感覚がなくなってくる。 慌ててウェアのジッパーを締め直し、手袋を重ね着して、ネックループを着ける。

 夕日にはまだ早いので南峰と北峰の間を行き来しながら心引かれる風景をフィルムに収めていく。

「午後の光」

「蒼い森」

 夕日の頃になると、小屋からも人が何人か登ってきた。 皆、一応に無言である。 無言なのは寒さのせいだけではないだろう。 空気は澄み切っており360度遥か遠くの山々まで見渡せる。 西には雲海が広がり、それを照らしながら夕日がゆっくりとその高度を下げていく。 目の前の風景全体が黄色からオレンジ色、そして赤色へとその色を変えていく。 この風景をじかに自分の目で見れば誰も言葉を発することはできないと思う。

 この風景を写真に写しとめることは不可能だ。 写真を撮ることを諦めて、私もしばらくこの風景に見入る。

「夕日の頃」

「夕照の山」

「夕照の森」

 夕日が沈んでしまうと私以外の人達は小屋へ帰ってしまったが、クライマックスはこれからである。 雲海の上に浮かぶ北アルプスはいままで日陰になっていてそのシルエットしか分からなかったが、 日が沈んだことにより今まで影だったところに尾根のひとつひとつが浮かび上がってきた。 南から穂高岳、槍ヶ岳、目の前の蓼科山を越えて、爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳、唐松岳、白馬鑓ヶ岳、杓子岳、 そして今夏私が登った白馬岳に小蓮華山。 なんと美しい山並みだろう。

「暮れ行く槍穂高連峰」

「後立山連峰暮色」

 辺りが真っ暗になってきているのに気付き、慌てて小屋へ戻ることにする。 途中の登山道は傾斜が急な上に凍り始めていたのでアイゼンを装着して慎重に下りていく。 樹林帯に入るとさっきまでの風が嘘のように止んだ。 樹林のありがたさを再認識する。

 小屋に戻ると紫色の空に月と一番星が輝いていた。 なんでもない風景だけど、今の自分の気持ちとして一枚撮っておこう。

「月と一番星」

 晩御飯は昨年同様鍋料理、またまた食べきれないほど頂きました。 御馳走様でした。

 夜はけんさんと写真談義。 いい写真たくさん見せていただいてありがとうございました。 最近コンテストに選ばれなくなったなんて言ってられましたが、 この前見かけたコンテストではちゃんと選ばれてましたよ。 おめでとうございます。 これからも活躍期待してます。

 今夜の泊まりは15人ほど。ゆったりと眠ることができた。

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