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8月21日
天候)朝方:晴れ 昼間:霧と雨 夕方:霧 夜間:霧雨
行程)中房温泉→燕山荘
 午前4時43分、JR大糸線穂高駅に降り立つ。 夜はまだ明けていない。 相乗りタクシーで中房温泉へと向かう。

 今回は2日前に山へ行くことを決めた。 それまで山へ行くことは全く考えていなかったのでコースを検討する暇もなく、 道をよく知っているいつもの燕・大天の半縦走コースにした。 それと雲海も久しぶりに見たかったので。
 同じところへ何度も行ってつまらなくないのかとよく聞かれるが、 季節を替えて行っているので見れるものもまた違うのである。 それに風景は常に変化している。 全く同じ風景というものは存在しない。

 なんてことを考えていると、 午前5時、けたたましい音と共にタクシーのメーターの割増ランプが消える。 早朝のタクシーは午前5時以後に乗るべし。

 中房温泉で登山届を提出し、いざ登山開始。 今回は30kgぐらいの荷物になってしまったので、ストックはダブルにした。 4本足で登っているのと変わりないのでこれはすごく楽。 荷物が10kgちょいの人と時間的にも変わりなく登ることができ、体力の消耗も少ない。 山に大荷物を持って行く人にはお勧めである。

 富士見ベンチの下ぐらいから稜線にかかっている雲の中へと入る。 辺り一面霧で近くしか見えない。 合戦小屋で名物のスイカを食べながら様子を見ていたが晴れそうにない。 春山編のときに天気がよすぎて写真が撮りにくい、 なんて書いたものだからこんな天気になってしまったのか。

 午前11時、燕山荘着。 稜線の西側はまだ雲の中ではなかったが、 燕岳には旗曇がかかっているし、槍ヶ岳は雲に隠れてしまっている。 写真はもう少し天気がよくなってからと思い小屋で昼ご飯にハヤシライスを食べていると 辺りは完全に雲の中に入ってしまった。 しまった、これでは何も撮れない。 仕方なく、近くのお花畑で花なんかを撮っていたが今一つ気分が乗らない。 そうこうしているうちに雨が降ってきたので小屋に戻る。 小屋では何もすることがなく暇を持て余す。

 夕方近く雨も止み、辺りを覆っていた雲も一瞬切れ、裏銀座の山々と太陽も瞬間見れた。 が、すぐに辺りは雲に囲まれて見れなくなってしまう。 太陽を次に見ることができたのは35時間後である。

 お盆も過ぎたのに小屋は一杯。 隣の人と隣の隣の人のいびきがうるさくて寝られず。


8月22日
天候)朝方:霧雨 昼間:霧雨 夕方:霧と雨 夜間:晴れ
行程)燕山荘→大天荘


 未明、早起きするも辺りは雲の中で時折小雨となる。 小屋で朝ご飯代わりの弁当を食べながら天気待ちをしていたが、 明るくなっても天気は一向に回復しない。
 燕岳の奇岩の撮影にでも行こうと思ったが、途中雨が降ってきたので小屋に引き返す。 このまま小屋にいてもすることがないので憂鬱な気分のまま大天荘へ向かうことにする。 途中ずっと西の谷より風が吹き上げ、雨も時折ぱらつく。

 表銀座縦走路との分岐から大天荘へ。 ダブルストックで快調に登って行くと、途中でチングルマの実の群落を発見する。 7月頃、ここは白い花がいっぱいできれいだったんだろうなあ。 しばしここで撮影。
 しかし、ここを登って行く他の人は周りにこんなきれいな景色があるのに 下だけを見て黙々と登って行く。 他に見るものもないし、そういう山登りはなんだかもったいないと思うのだが。

 午前11時、大天荘着。 普通なら常念小屋まで足を延ばす人がほとんどだと思うが、私はここで宿泊の手続きをする。 ここなら10分の楽な登りで360°の大天井岳頂上展望台、 常念小屋なら1時間10分の急登で360°の常念岳頂上展望台。 景色的にも大天井岳からの展望の方が個人的に好きであるから 明日の行程はしんどくなるが大天荘泊りとする。

 昼ご飯にカップラーメンを食べて天気待ちしていたが、一向によくならない。 仕方ないので小屋の近くでコマクサなんかを撮っていたら本格的に雨が降ってきた。 慌てて小屋へ戻る。 小屋では特にすることもなく小屋に置いてあるヤマケイのバックナンバーを読んだりする。 ふう、私は一体何をしにここに来たのだろう。 いつでも外に出れる準備はしていたものの結局そのまま夜になる。

 今日は小屋はがらがらで20人ぐらいしか泊まり客がいない。 私も3畳ぐらいの広さのところをひとりで独占して使わせてもらう。 こんなにのびのびできるのは久しぶり。

 真夜中、目が覚めると足元が妙に明るい。 手洗いに外へ出ると空には雲が多いものの月がでており、ヘッドランプなしでも外を歩ける。 もしやと思い槍穂の見える位置まで歩いて行くと そこには今回やっと見ることのできた槍穂高連峰が眼前に広がっていた。 月光に浮かび上がる槍穂は何とも幻想的でしばらくそこにたたずむ。 この天気、明日の朝までもつのか。


8月23日
天候)朝方:晴れ 昼間:晴れのち曇り 夕方:曇り
行程)大天荘→大天井岳(2,922m)→常念乗越→一ノ沢


 午前4時、そっと小屋を抜け出す。 月はもう西の地平線へ沈んでおり辺りは真っ暗で、空には満天の星が輝いている。 あわてて大天井岳頂上へ急ぐ。

 大天井岳頂上から見る展望はそれは素晴らしい。 空には満天の星。 東の上空にはオリオン座が輝きその下の地平線は明るくなり始めている。 東の安曇野は雲海に覆われており日の出を待つばかり。 西を見れば闇夜の中に雲一つない槍穂がそびえたっている。 これから約2時間、雲と太陽と山がおりなす自然の壮大なドラマが始まる。 それを大天井岳2,922mの頂上から眺めることにしよう。 今回はこれを見に来たのだ。 観客は今のところ私ひとり。 なんという贅沢。

 朝の景色を十分に楽しんだ後、 小屋の近くで裏銀座、剱、立山、燕、針ノ木、鹿島槍の眺望を眺めつつ 朝ご飯の代わりの弁当を食べる。 今日はなんていい天気なんだろう。

 大天井岳から常念乗越の区間は私の大好きなところで、 ここはずっと緩やかな下りの山上の散歩道。 好天の中、ゆっくり時間をかけて景色を楽しみながら進む。

 午後12時半、常念小屋着。 昼ご飯にカレーライスを食べる。 帰りのタクシーを予約して、一ノ沢へ降下開始。

 ところがこの一ノ沢、なかなか道が悪い。 よく整備されているのだけど沢沿いの道なので大きな石がごろごろし歩きにくく、 実際私は右ひざを痛めてしまった。 今回はダブルストックだったので助かったが、大荷物の人は要注意である。 それと、一歩踏み外せば数10m下の沢まで一直線という崖の上を歩く箇所があり、 この辺りで死亡事故も多数発生しているのでこれも要注意である。 崖が草で覆われて一見それとは分からないから始末が悪い。 それにしてもこの一ノ沢のコースは長い。

 ようやくタクシーと合流し2日前に出発したJR穂高駅へ戻る。 今回はあまりいい天気ではなかったけれど、最終日はそれなりに楽しめたと思う。 さよなら常念、さよなら槍穂、また会う日まで。


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山日記
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